85mmの視点(1)

常用するレンズの焦点距離と年齢は比例関係にあるというジンクスを聞いたことがあります。年齢の2桁目が繰り上がったので、焦点距離もマシマシなレンズを持って主役を探す旅に出てまいりました。85mmの画角が描き出す世界をご覧いただきましょう。


ということで新しい仲間を紹介します。以前所有していた70-200mm F4のレンズを飽きたので経済的な事情で手放し、その代わりとして入手したのがこの会津育ちの85mmレンズであります。

構図の中に主役がいた方が絶対楽しい、というのは昨年身をもって体感したので『ポートレートレンズ』とも呼ばれる85mmに挑戦してみることにしました。初の中望遠単焦点。広角以上・望遠未満な画角はなんとなく使う場面を選ぶような、言うなればじゃじゃ馬なレンズというイメージがあってこれまで敬遠していました。実際どうなんでしょう?答えは、撮ってみなくちゃ分からない。七五八想造社で。

本日の妄想BGM。暑いので無理せずのんびりと行きましょう。

日本平です。駿河湾と太平洋にほど近い丘。そのふもとにあるのが日本平動物園であります。公式Webサイトを見る限りでは距離の近さが売りのひとつであるようですね(旅行後に気がつきました)。がっつりズームできない85mmとは相性のいいロケ地かと思われます。なお、本記事では動物の紹介は一切省略しますので適宜公式サイトをご覧になって補完してくださいませ。

それにしても暑い・・・。午前10時、気温は33℃。だけど外に出れば気持ちのいい風が吹き抜けていて、なまよみの国ほど体感温度は高くないようでした。

いやいや、それでも暑いものは暑いので動物たちだってへばってしまうのです。夏なんです。

しばしば畏敬の対象となる彼らもこんな様子でした。デッカイネコチャン。

あ! 舌しまい忘れてる!

涼しい場所を見つけたピューマ殿。玄関のタイルとかで寝てそう。

あ! 白目むいてる!

良い感じのボケ味がもたらすエモさを一撃で破壊する寝顔。黒くて暑そう。

こうも暑いと涼しい光景を探してしまうものです。やはり被写体が引き立ちますね。

ペンギン園の水槽が見える天窓。床(とバケツ)に水面が揺れる。涼しいねえ。

広角で撮るとこんな感じ。なにかの儀式かな?

味気ない(どころかちょっとシュールな)光景も画角次第では良い感じの雰囲気を演出できるみたいです。水漏れの補修はお早めに。

レッサー殿が近いよ。実際手を伸ばせば触れられそうな距離。人間向けに冷やされたビジターセンターと自由に行き来できる高待遇っぷりであります。

しかし変態カメラ小僧につけ狙われて嫌気が差したのか、そそくさと外へ。スタスタと歩き回り、再び中へ戻っていった。なんじゃそりゃ。

この表情がすべてを物語っていますね。外は暑いのよ。夏なんです。


せっかくなので大口径の明るいレンズを活かした画作りをしてみたい。そう考えていたところ目に入ったのがこのおどろおどろしい建物です。ほう・・・面白そうじゃねえか。

この掲示物がバーンと現れるのはちょっと怖いのでやめて欲しい。でもこれってカメラレンズも同じですね。暗いところでは絞りを開いて少しでも光を多く取り込めば、シャッター速度を稼いで動体ブレを抑えられる訳です。素敵な前フリに感謝します。(うっすら写り込んでいるのは徳川家に仕えた足軽の地縛霊です。特に問題はありません)

フェネ殿。お初にお目にかかります。壁際で無限ジャンプ。残機を増やしているのかもしれない。ISO感度アゲアゲでもこのすばしっこさを動体ブレ無しでは捉えられなかった。ソワソワしすぎ!

しかし向かい側のブースでは無数のコウモリが飛び回っていて、撮っているヒトもなんだかソワソワしてしまう施設です。早く出たい・・・

こっちを向いた!? お邪魔してます。

手前までおいでなすった。サービス精神旺盛か?恐縮です。

今回の探訪で目が合ったのはフェネ殿だけではありません。日本平動物園の展示手法の良さが大きいのでしょうけど、被写体とよく視線が合うような気がしました。

文句の一つでも言われそうな表情である。お休みの所すみません。

ヒエッ・・・すみません。

α9閣下はひるむことなく瞳AFをキメてくれたけど・・・ファインダー越しでも思わず立ちすくむ貫禄かな。


85mm単焦点をひっさげて動物園へ行くのは画角的に無謀だと思っていましたがそんなこともなく、むしろ近寄らないと撮れない故に被写体とのコミュニケーションが生まれるという知見を得られました。光学的なところだけでない、不思議な魅力が85mmにはあるようです。なるほど、これがポートレートレンズたる所以か。癖になりそうですね。

必ずしも白い鏡筒のバズーカを担ぐことはないんです。好きな機材で自在に好きを表現できたら、それはもう立派なハピネスではありませんか。好きと言える機材に出会うまでが茨の道ですが・・・。

(次回に続きます)


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